花祭り

白い象

小さなお釈迦さまを納めた

花御堂を背中に載せて

白い象

子供たちに引かれて

境内を出てまちを巡る

白い象も 子どもたちも

何処へ行ってしまったのだろう




手ぬぐい舞う

昼の半月に春の風が吹き

手水舎に三枚の手ぬぐいが舞う

泥汚れの一切ない手ぬぐいが舞う

見覚えのある桜の花柄も舞う

憂いが綴られた貼り紙は

柱からきれいに剥がされて

何事もなかったかのように

鯉の口からご神水がとくとくと流れ落ちる

池の真鯉は戻っておらぬが

ひとの手を逃れたふきのとうが

縁の石垣の隙間から

立派な花を咲かせている




揺れ

戯れに引いた御籤(みくじ)に図星を指され

おろおろ歩いて小石につまづく

力加減を過(あやま)つ指で

細縄に結わく御籤はちぎれてしまう

どうしようどうしよう

ごめんなさいごめんなさい

竹林が風を孕(はら)んで揺れる揺れる

獅子の毛振りの如く 揺れる揺れる




畏(かしこ)まる

鳥居の傍に流れの速い小さな川がある

川というより水路なのだろう

遠い昔の開拓事業の賜物に違いない

あの真っ白な雪を頂く山から

幾つもの紆余曲折を経て流れ至っているのだろう

清冽な流れは水草を勢いよく洗い

迷うことなく一直線に進んでゆく

辺りに雪など微塵もみられないが

その冷たさは指がちぎれてしまいそうなほどだ

いかにもここの祭神(さいじん)に相応しい

御手洗(みたらし)川の風情である




白い花

山茶花が咲いていた
杜の奥でひっそりと
白い花を咲かせていた

七五三詣の幟が賑やかに並ぶ参道
泥の飛沫をつけた菊柄の手ぬぐいが翻る手水舎
どろりと緑に濁った池には落ち葉が浮かぶばかり

山茶花が咲いていた
「忘れていたのでしょう」と
花びらを一枚二枚と落とした



変わりゆくもの

今年は雨とは無縁そうな秋祭り
合図の花火があがると
どどん どどん 
祭り太鼓が聞こえてくる

時折マイクを通したような声がするが
神輿が出るのは明日だけだろうか
子ども神輿も見かけなかった
それでも街はざわつき
迂回で車はごちゃついている

夜更けを待たずに
祭りの気配はなにも感じられなくなった

秋虫たちがやけに声高に鳴いているだけである



不穏

アメンボたちは
漂う枯葉や千切れた枝葉を避けながら
緑に濁った池の面(おもて)を滑り行く

いつもなら
池に架かる小さな石橋に立つと
どこからともなく現れて
ぱくりと口を開ける真鯉たちが
幾ら待ってもいっこうに姿を見せない

手水舎の一枚ぎりの手ぬぐいは
やはり泥をつけられたまま
どこかしょんぼりとした風情で
ゆら、ゆら、と揺れている




黙祷

心のなかで

静かに鈴(りん)を鳴らそう

無念纏(まと)うた魂の為

百日紅の花の下で

静かに鈴(りん)を鳴らそう



手ぬぐいの行方

手水舎の柱に小さな貼り紙があった

「もしここに手ぬぐいがないときは
私たちの悲しみが深まったとお察し下さい」

細く小さな文字が悲しみに震えている傍で

一枚になった手ぬぐいが

やはり泥をつけて風に揺れている

季節を楽しませてくれた手水舎の手ぬぐいは

もう二度と見られなくなってしまうのだろうか



手水舎で揺れている三枚の手ぬぐい
どれも茶色い泥で汚れている

十日前も汚れていた
一週間前も汚れていた
三日前もそのままだった
今日もやはり汚れたままだった

今までにないことだ

作法に従って
手水で清めた後は
ゴソゴソと自分のハンカチを取り出して拭いた

蝉の声は空しく
小鳥の声は哀しく響いた



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Moonlight

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