告白


信号待ちで見上げた空は


すっかり暮れてしまっている


今宵の三日月はやけに綺麗さ


おまえが好きだ と叫びたくなるほど


とても綺麗さ 綺麗だよ




美味しい月

今宵の月も立派です

どこか旅に出たいなぁなどと

無理を承知で呟いてみたりします

ぴかぴかの月に

温かさはまるで感じないのだけれど

ただ丸いというだけで

明日ホットケーキを焼こうと思う

小鬼なのでした




十三夜

刈り残しの稲は黄金に輝き

さざなみを立てながら順番を待っている

刈り取りを終えた田圃では

黒く焼け始めた籾殻の山が煙を吐き出す

そのもくもくとした白煙が

今夜の月の邪魔をしないか気がかりで

黄金の波はそっと囁く

明日まで待ちます待ちましょう




月と虫

るりりりりぃぃ と


秋虫の声があまりによく響くので


雲で滲(にじ)んだ半月は


思わず光を強くして

何処じゃ何処じゃと身を乗り出した



十六夜の舟

願ったほどの雨にはならず

遠くへ流されてゆく筈の小さな笹舟は

川の本流から離された

淀みのなかをさまよっている

ゆらゆら くらくら さまよっている

雲間からお出ましの十六夜の月が

明るく照らし出す笹舟は

ゆらゆら くらくら 水面に遊ぶ

恵みの雨が遠のけば

やがて干上がる淀みのなかで

乾いて裂けて朽ちる笹舟

そっと載せた小荷物は

そのまま川底へ沈むのだろうか

どこへも行き着かず 解放もされず

ずぶずぶと沈みて 眠りにつくのか




月光

街が寝静まる頃になり

ぷるると身震いでもしたかのように

月はそれまでの滲んだ輪郭を振り払い

その輝きを持って 下の世界を照らし出す

火星という赤い星を供にして

煌々と放たれる光を容赦なく感じるものは

素早く物陰に身を潜めていることであろう

月光浴を諌める言葉は風船に詰めて

夜空に向けて パンッと割ってしまおう

素晴らしく尖った銀の針先で ちょんとつけばよい

赤い星がピカピカと瞬き

月では兎が手を叩いて小躍りするのがみえるだろう




月に雲

立待ちの月が南中を過ぎる頃



ようやっと息がつけるほどの空気が


そよ と流れてきた


空梅雨はまだ明けぬらしい


ああ また雲たちが寄せてきて


眩(まばゆ)い月をすっかり隠してしまったよ





苺の月

梅雨空に 苺の月と出逢えたこと

それこそが幸運の訪れそのものだ

空に蠢く数多の雨雲は退き

美しい輝きを放つ苺の月のひとり舞台だ

歪み縮んで煤けた僕の魂よ

そのまぶしい月光をたっぷりと浴びるのだ

気を失うほどに たっぷりと 浴びるのだ




赤い月

太陽の熱い吐息に絡まれて


萎んだからだで突っ伏した


床の上から臨む月は


今夜も赤く夜空に滲(にじ)む


背中を撫でゆく冷ややかな川風に


去りゆく月を追う眼(まなこ)も


やがてはとろりと閉じるだろう






おやすみなさい

雨は降ってはいないけれど

こんなに雲が厚くては

お月さまは無理ですよ

あわよくば

星のかけらでも 落ちてきやしないかと

闇のなかに

白い両手を差し出しても 無駄ですよ

さぁ 今夜はもう眠るのです

明日ならば

下弦の月を拝めましょう




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