最後の三日月

西の空に懸かる月は

かろうじての三日月

明日には半月まで膨らむのだろう

やけに大きくぴかぴかしてみえるのは

明日は会えないと踏んだからか

お願いだ

その光で 朝から続く頭痛を焼き払ってくれないか




白木蓮のつぶやき

昼間はあんなに晴れていたのに

夕陽もあんなにまぶしかったのに

日が沈んだらすっかり曇ってしまった

咲くのはまだ先と思っていたけれど

レンギョウやコブシのねえさんたちが

「今夜は満月だから」と

「おまえさんの白い花びらが

まんまるお月さんに照らされたら

さぞかし綺麗に違いない」と言うものだから

おそるおそるつぼみを膨らませて

咲き始めてみたのだけれど

空は真っ暗 お星さまも見えやしない

「お生憎さまだったねぇ」と

ねえさんたちは早々に眠りについた

次の満月の晩が来るまでに

わたくし咲いておられましょうか




猫と小鬼と十三夜

十三夜を見損なったと機嫌の悪い猫が

寝床で十三夜の月を歌う

隣で小鬼が何度も寝返りを打つ

オイラだって見ていないのさ

満月を見たらいいよ 満月を

駄目ダメ 十三夜がいいんだよ

ぶつぶつぶうぶう口説いているが

いずれ眠気に負けるであろう猫と小鬼

十三夜の寝息を立てて眠る眠る

すうすう すやすや おやすみなさい




射すくめられて

満月の光に射すくめられ

凍りついているのもよきかなと

朝からの雪嵐やのちの暴風のことなど忘れ

満月の前を早足で駆け抜けてゆく薄雲と

小さな星から送られる瞬きの合図に

凍りついているのもよきかなと

あれほど

春を待ち望んでいたはずなのだが

この寒空のなかにある満月の

なにか絶対的なものを思わせる光に

まんまと射すくめられ

凍りついているのもよきかなと 思うのだ



嵐のあとに

激しく泣きじゃくる空

怒りに荒れ狂う風

不安を膨らませる雲の塊

ようやく落ち着きをみせたのは

夜もすっかり更けてからだった

空はピタリと泣き止んで

ぷぅと膨れた雲たちは

怒り疲れた風の余力で押し流されてゆく

そうしてようやく小望月が

煌々たる光を放ち

乾いた街路につくる影はきっぱりとして

明日の寒さを予感させる




淋しい三日月

相変わらず寒いけれど

昼間はきれいに晴れていた

けれども

今夜の三日月はぼんやりと

夜空に輪郭を滲(にじ)ませて

早々に引っ込んでしまったよ

どこか加減でも悪いのなら

すりりんご 作ってあげようか

山の陰で しくしく泣いているなら

温かい毛布を 掛けてあげよう




十六夜の涙

凍える夜空に滲むほど

涙にくれる十六夜の月

お小姓の星たちは

目配せし合って襖を閉めた

これから雨になるのだろう

やがては雪になるのだろう




ショータイム

白く冷たい息の先で

目張りの満月は刻々と欠けてゆく

まばゆい光は徐々に広がる赤みに追われ

やがて細い細い爪痕となり 消えた


再びの満月はシフォンのヴェールの向こう側

行き場を失った光は

月の周りに大きな暈(かさ)を作る

それでも光は地上に届き

凍りつく雪の塊をきらきらと照らし出す


禍々しくも美しい 凍える夜のショータイム





月のうた

このうたは

いつ

誰に教えてもらったのだったか


さぞや今夜も美しかろうと思った月は

妖しく渦巻く黒雲の彼方にある

風の悪戯か

一瞬だけみせたその姿はまるで

夜空にぽっかり開(あ)いた丸い穴だ

再び闇夜に戻る刹那

思い出しかけて取り逃がす記憶


このうたは

いつ

誰に教えてもらったのだったか

本当は忘れてなどいない






夜道

ザック ザック ザック と昼間歩いた雪の上に

日が落ちてから積もった新雪が眩しいよ

満ち満ちてきた月の光が煌々と照らす帰り道

凍てつく夜空の星の瞬きに気を取られ

新雪の下に隠れる氷の道に ご用心ご用心




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