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2017年10月

落ち葉の行方

哀れ紅い落ち葉の娘たちよ

濡れそぼったからだが乾くやいなや

暴れん坊の北風吹き荒れる

箒(ほうき)の先にかかる前に

右も左も上(うえ)下(した)も

分からぬままにくるくる廻り

遠く遠くへ飛ばされてゆく

ごうごうと鳴り渡る風に

「ごきげんよう」の言の葉ちぎれゆく



紅い葉

雨に濡れる紅い葉は

ハナミズキから散れたのだ

容赦ない雨に散らされたのだ

薄いレンガ色の歩道の上で

ひとところに集まって

冷たい雨に光っている




おかえり雀

ちゅんちゅん雀の声がする

刈り入れ終わった稲田から

ちゅんちゅん戻ってきたらしい

美味しい新米たらふく食べて

元気に戻ってきたらしい



椿の実

昼に上ったほぼ半月は
秋晴れの青が透けるほど
儚い白さで浮かんでいる

秋の短い日が暮れて
ほぼ半月が輝く頃に
薄墨色の雲が流れ出す

「元気をお出し」

ぴくんと驚く小鬼の後ろで
ぱかりと口を開いた椿の実が
つやつやぴかりと光ってみせた



飛行機雲

やっとの青空に

一直線に上昇してゆく飛行機雲

先端の豆粒ほどの機体は白く

きらりと光って進んでゆく

一寸の迷いも感じられない航跡は

軽い嫉妬を覚えてしまうほど美しい

やがては空にとけてゆく

その結末に憧れる



解けた魔法

濃霧の夜明け

真っ白な景色

ようやく霧が晴れても

空に広がるのは

灰色の雲雲雲

オーロラを閉じ込めたような

ガラス玉をかざしてみる

お揃いの指輪

片割れは行き方知れず

ひとつでは

雲は晴れない



嘆きの実

嵐のあとの地面には
小さな紅い実点々と
晴れぬ雲を見上げて嘆く

年越して
餌に窮した小鳥のために
雪にも耐えて待つ我が身

だのに
ああ口惜しや口惜しや
まだ十月にこの仕打ち

身悶えしながら嘆く嘆く

千切れた小枝や木の葉らが
かわるがわるに慰め言うても
悲嘆に暮れるその耳には
到底届きゃあせんだろう




ねんねんころり

ねんねんころりのうたうたい

あらしのばんもうたいましょう

はげしいあめもおおかぜも

しんぱいごむよう ねんねしな

すべてのおとはねむりのもとさ

ねんねんころりのうたうたい

あらしがさったばんだとて

どこからともなくあわられて

ねかしつけるよ ねんころり

ゆめのくにゆき まもなくはっしゃ



嵐の夜に

偶然出会った小さな蝶は

ようやく一枚の葉の上に落ち着いた

しばらくすると

根負けしたようにその翅を広げ始めた

小さな翅は美しい青灰色をしていた


今夜の嵐はかなり荒れそうだ

美しい青灰色の翅をぴたりと合わせ

どこか雨風の当たらぬ葉の陰で

じっと息を潜めているがいい

そうして嵐が去ったなら

またその美しい翅を見せておくれ




網を張る

電柱と街路樹の間に網を張り

じっと獲物を待つ女郎蜘蛛は

小雨降る灰色の空に手足を広げて

ぽっかりと浮かんでみえる

不運にも網にかかった枯葉が一枚

ぷるぷると小刻みに震えている

道端の草むらに潜む白く大きなキノコたちが

細長い草葉の隙間から

中空の不思議な光景を息を殺して見上げていた



繕(つくろ)い物

綻(ほころ)びを
きれいに繕わなくては

時間はかかっても
ちくちくと繕わなくては

お針はちょっと苦手だけれど
きちんと繕わなくては

そうよね、にいさん

机に向かうにいさんの背中が
そうだ、と言っている



お手伝い

枯葉のエア・プレーンなら
軽々とひとっ飛び
毛糸のマフラーぐるぐる巻いて
さあ、ゆこう 出発だ

歩道に洩れるやわらかな香りと
あたたかな灯りが目印
ドアの隙間からするりと入り
灯りの届かぬ闇へ潜め

筆を洗う水を替えよう
絵の具のふたを緩めておこう
きれいな白い布切れ
ポンポンはいるかしら
誰か温かい飲み物を
おっとマッサージは気づかれぬように

そして…

夜明けを迎えたアトリエの
テーブルの上のどんぐりが
数を増やしてころころと転がっていた




白い花

山茶花が咲いていた
杜の奥でひっそりと
白い花を咲かせていた

七五三詣の幟が賑やかに並ぶ参道
泥の飛沫をつけた菊柄の手ぬぐいが翻る手水舎
どろりと緑に濁った池には落ち葉が浮かぶばかり

山茶花が咲いていた
「忘れていたのでしょう」と
花びらを一枚二枚と落とした



漂流

容赦のない時の流れは

有難くもあり

恨めしくもある




夜の囁き

冷たい雨は小止みになったが

タクシーも通らぬ街路は寂しく光る

暖かくしておやすみなさい

温かいものを飲んでおやすみなさい

見えないけれど

支度中の細々とした月の囁きが聞こえてくる



案山子(かかし)

頭(こうべ)を垂れた金の波は
雨をたっぷり吸い込んで
堪えきれずに倒れ伏す

稲田に円を描く様(よ)に
倒れ伏したる稲穂の上に
ちゅんちゅん雀がやってくる
おこぼれ米がお目当てか
ちゅんちゅん次々やってくる

「こぉれ、おめだち(お前たち)なにしとる」
声を出しかけ呑み込む案山子

ちゅんちゅん雀は口々に
「もうじき爺さん来るさけぇ」
「機械が無理なら手で刈るさけぇ」
「あと少しの辛抱じゃい」
頑張れ頑張れと繰り返している

「はようおてんとさん出とくれよ」
案山子の願いはただひとつ



雨が止んで思ったこと

季節にやさしさを感じなくなったのは

いつからだろう

それでも木や草は芽を出し

花咲かせ実をつけることを怠りない

鳥や虫や動物たちは

戸惑いながらも季節を過ごしている

この世から全ての人間が消えたなら

長い年月をかけて

また季節にやさしさが戻るのだろうか



雨は静かに川の水かさを増やし流れる

カモが昼寝をする中州は消え

アオサギが獲物を狙う浅瀬も消え

ただ静かに濁った水が流れてゆく

川岸の草は流れに洗われ

これもやがては没してゆくのであろう



静かなショータイム

夕方から降り出した雨は
路面をたっぷりと濡らし
それを外灯が照らす

駐車場の掲示板のパールがかった光
空車を示す「空」の緑の光
エントランスのオレンジ色の光

濡れた路面は
それぞれの色に染まり輝く
きらきらと輝く
きらきらと輝く

それは
誰にも気づかれない
夜明けまでの光のショータイム



変身

街灯のオレンジ色の光の下で

金に輝く蝶となった蛾は

ひらひらきらきら宙を舞う

灯りが消えるまでのシンデレラ

ひと夜の夢と宙を舞う



季節はずれ

どんよりと低い雲が垂れ込め

朝から薄暗い

風もなく

なんだか暑い

半袖はとうに片付けてある

先週、扇風機と入れ替えに

あわてて出した電気ストーブが

壁際でじっと息を潜めている



夏の思い出

秋の日に

仕舞い忘れの夏扇子

開けば紅(あぁか)い金魚が跳ねるだろ

風を送ればほのかに沈香が香るだろ



迷い鳩

夜のベランダに鳩がいる
左足に赤と思しきリングをはめて
じっと手すりに止まっている
そっと近づいても逃げる気配もない
暗すぎて動けないのか

寒くなったか 眠くなったか
しばらくして
すっと伸びていた首は
膨らんだからだのなかへ埋まった
そっと離れて部屋へ戻る

夜が明けて
明るくなったらゆくんだな
おまえを待ってる誰かの元へ



ロス

金の花も

銀の花も

今年はあっという間に散ってしまい

秋の香りの空白を

どうして埋めたらよいのでしょう





秋雨

山から初冠雪の便り

湖から白鳥の飛来の知らせ

夕刻の寺の鐘は

すっかり陽が落ちてから鳴り出す

確実に移ろいゆく季節

柿の実は色づき

ご無沙汰のヒヨドリが偵察に来る

ああ、雨が落ちてきた

冷たい雨だ




逢いたい

十五夜お月さま
ちょっとだけでもいいから
逢いたかったな

そうつぶやいた朝顔は
紫色の花びらを
くるくる巻いてしぼんでゆきました



十五夜

十五夜のこの月を

いったいどれだけのひとがみつめていることだろう

きれいに晴れた夜空に堂々の月

雲をやり過ごしすぃっと出た月

気まぐれな雲の間からちらり覗く月

そのどれもが美しく強い光を放つ

寒さを我慢しての月光浴

今夜は良い夢をみたいから





ぼんやりな月

月はぼんやりと浮かび
数を減らした虫の声は侘(わび)しく
雨のせいか風のせいか
花を散らした金木犀は黙したままだ

月も動くが雲も動く
ややあって
ぼんやりな月は
長く幅広の厚い雲の向こうから
驚くような光を放ち
雲の縁を明るく照らす

きみはもう
ぼんやりではなくなったのだな




鬼灯(ほおずき)

道に迷うて日が暮れて
どんとつまりの行き止まり
右へゆこうか左が誘う
もと来た道は肩叩く

「坊っちゃん、私をお持ちなさい」

路傍で真っ赤なほおずきが
ゆらゆら揺れて声掛ける
先(せん)の風雨に倒されたのか
草の葉陰に伏すほおずきの
数のなんと多いこと

「そいつはとっちゃなんねぇよ」

駆けて来た柴犬のクロがわんと吠えた



子守り月

今宵の月は朧(おぼろ)にて
滲(にじ)む光に心も滲む

消え入りそうな朧の月に
闇の雲が触手を伸ばし
ゆるゆるゆると囲い込む

「可愛いあの子が寝つくまで
いましばらくのご猶予を」

夜風が雲を動かして
闇の触手を追い払い
ほぼ閉じかけた帳(とばり)を開けて
朧な月を連れ戻す

やがて
小さな寝息を聞きながら
朧な月は消えてゆく
安堵の吐息をつきながら
朧な月は消えてゆく





朝顔の朝

電信柱にとりついた
か細く頼りなげな一本の蔓(つる)は
くるりくるりと巻き上がり
どんどん上へと這っていった

そうして
追っ手が届かぬところで
紅紫の花を咲かせた
ひとつふたつみっつよつ

他のどれよりも
一番空に近いところで
清々と咲いている

見晴らしを楽しむ時間(とき)は
そうは残されてはいないのだけれど
じきにねえさんの日傘のように
くるくる折り畳まれてしまうのだけれど





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