盆の踊り

雨は止みはしないが

合図の花火が鳴った

太鼓と笛の音がかすかに聞こえてくる

どんなメロディかまでは分からない

ゆっくりとしたリズムの静かな踊りなのか

テンポの速いリズムで賑やかに踊っているのか

雨は笠を濡らし 髪を濡らし 浴衣を濡らすが

踊りの輪は崩れることもないのだろう



打ち上げ花火

今年もまた

ベランダの手すりにもたれて

遠い花火をみている

次々と咲く打ち上げ花火は

たとえ尺玉といえども

こうも離れていれば

僕の手のひらの上に載る大きさ

遅れて聞こえてくる破裂音も

隣家の庭で鳴く秋虫の

りりりの声に掻き消される

この距離なら

この距離なら 傷つくこともなかったのにな





終演

休むことなく奏でられるピアノの音色は


聴く者の心を温めて


丸く平らかにしてゆくのだけれど


「またね」と幕が引かれたそのときから


再び心はささくれ出す




境界線

きみは

静か過ぎるこの夜に


かえって


胸が騒いだりはしないのか



新月

新月の晩

風は止んだが

開け放した窓から

ひんやりとした空気が忍び込んで

風呂上りのからだを冷やしてゆく

聞こえてくるのは蝉ではなく

こおろぎの声

脈打つ頭痛はいつ鎮まるのか




「小指の爪を伸ばしているのはね


おはじきとおはじきの間の

狭い隙間を通すためよ」

白くて細くて長い指の先で

コツンと弾くガラスのおはじき

あたしもあんなふうになりたいと

毎度うっとり眺めていました

けれどもいつしか

他の指の爪も伸ばしたああちゃんは

どこかへ行ってしまったのでした




お師匠さまへ

濡れた雨傘開いて干して


明日はまたぞろ日傘の出番


一度涼しさ味わった


からだが悲鳴をあげぬよう


どうかご自愛下さいまし




あと少し

嵐の予兆か風が吹く

古木大木(こぼくたいぼく)の枝揺らし

ゆさりゆさりと枝揺らし

霧雨をも巻き込みながら風が吹く

幹に取り付く蝉たちの 残り少ないいのちの声は

風音(かざおと)にも怯まずに

あと少し あと少し と 続いてゆくよ





算盤(そろばん)

ご破算で願いましては

ご破算で願いましては

さてそのあとは

いったいどこから始めたらよいのやら

とんと見当も尽きませぬ

番頭さん 番頭さん

これで帳尻は合いましょうか

これで帳尻は合いましょうか

ああ ああ 番頭さん

雨が降って参りました




雨が来た

やっとのやっとに降り出した雨に

木の葉さざめき 花々笑う

次第に強まる雨脚に

自転車の少年たちはコンビニに雨宿り

乾ききった地面が

激しい雨をゴクゴクと飲み干してゆく

熱帯夜の街並みはどんどん冷やされて

酷暑に疲れたからだは戸惑いながら 暮れてゆく




«オニヤンマの水

Moonlight

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