ぞわぞわ虫

少しだけ 春を感じた 陽射しが

少しだけ 胸に巣喰う ぞわぞわ虫を

少しだけ 駆逐する

いつだって 耳から入り込むそいつは

黒い霧を吐きながら 増殖する

そうして じわじわと脅しをかけてくる

春の陽射しが 有効なのかどうか

はっきりとは わからないが ただ

少しだけ 息がつけたのは 確かだ




淋しい三日月

相変わらず寒いけれど

昼間はきれいに晴れていた

けれども

今夜の三日月はぼんやりと

夜空に輪郭を滲(にじ)ませて

早々に引っ込んでしまったよ

どこか加減でも悪いのなら

すりりんご 作ってあげようか

山の陰で しくしく泣いているなら

温かい毛布を 掛けてあげよう




白塗りの雪

春想う 白詰め草の夢散らし

静かに舞う雪次第に積もりて

あたかも舞妓の白塗りのごと

板刷毛の動きは見えねども

辺り一面 白く白く塗り広げゆく





粥、ひと椀

坊さまの作ってくれた粥が

ゆるゆるとからだのなかを温めてゆく

椀を持つ手に血の気が巡る

強い北風は思いのほか体力を奪う

空腹なら尚更からだを冷やす

うまいはしあわせ あたたかいはしあわせ

小鬼は鼻をずずっとすすった




雀の実

なんという木か分からぬが

すっかり葉が落ち寒そな枝を

幾本も幾本も 天に突き出して

通り掛かりの塀の向こうに立っている

今日はどこか様子が違うと目を凝らす

すると

雀が 雀が 雀が 雀が 鈴なりだ

からだを精一杯に丸くして

団子のようななりをして

雀が 雀が 雀が 雀が 鈴なりだ




揺れ

戯れに引いた御籤(みくじ)に図星を指され

おろおろ歩いて小石につまづく

力加減を過(あやま)つ指で

細縄に結わく御籤はちぎれてしまう

どうしようどうしよう

ごめんなさいごめんなさい

竹林が風を孕(はら)んで揺れる揺れる

獅子の毛振りの如く 揺れる揺れる




女王陛下の秘密

女王陛下はね

おやすみ前のミントチョコが

お楽しみなんだって

女王陛下も

ちゃんと歯磨きするのかな




甘いお話

ああ もう と

店先に並んだ さくら餅を

いや まだ早い と見送っていた

春よ来い とは思うけれど

梅もまだまだ咲かぬのに

どうしたものか と迷ううち

やあやあ と

本日 並んでいたのは かしわ餅

いくらなんでも早かろう

戸惑う小鬼の顔(かんばせ)に

舞う舞う小雪が降りかかる


さらわれたもの

不用意に開けた窓から

びゅうと風が吹き込んで

たくさんの言の葉をさらっていってしまったのだ

あわてて手を伸ばしたけれどもう届かない

さらわれた言の葉は木の枝に引っかかっているのか

湿った地面の上に落ちているのか

さらさらと降り出した雪が

あっという間に隠してしまったから

いまきみにかけたい言葉がみつからない




感傷

通り掛かりの道の脇に

幾羽かのカラスが群がりて

毛皮の塊を啄ばんでいる

嗚呼それは

車にはねられたと思しき狸の亡骸

弔いは鳥葬のあとに風葬となり

毛の一本も 血の一滴(ひとしずく)も

日に照らされ 風にさらわれ

やがては土に還りゆき

痕跡はすっかり消し去られてしまうのだろう

その代わりに

ぽちりと小さな星がひとつ

寒空に増えたような気がしてならない僕を


下らぬ奴と嗤(わろ)うておくれ嗤うておくれ



«畏(かしこ)まる

Moonlight

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