行き先

木々を揺らし花を散らし
埃を舞い上げ幟旗を千切り
大風が吹き荒れる

熱い空気を追い出し
湿ってひんやりした空気を呼び込み

屋根を滑りビルの角に当たり
轟(ごう)と音を立て
大風が吹き荒れる

その風のなかでくらくらと
おまえの魂はいったいどこへいこうとしているのか



今日の小鳥

今日の小鳥はじゅうぅと鳴くの

じゅうぅ じゅうぅ と鳴きまする

僕はここだよ ここにいる

僕をみつけて 返事をしてよ

朝からこうして鳴きまする

じゅうぅ じゅうぅ じゅうぅ じゅうぅ




眠り

左手首の裏側に

ちょっぴり塗り込む練り香が

ふわりと鼻先かすめれば

悪い夢だけ追い出して

眠りの帳が下りるでしょうか



小鳥

カワラヒワのさえずり止まぬ

電線の定位置で

きるる きるる きるる

そろそろ暑くなるから日陰へお行き

きるる きるる きるる

夕暮れの涼風が立つ頃

電線の定位置で

きるる きるる きるる



下弦の月

日付が変わってやっと出た月は
よく晴れた朝の空に
まだぷかりと浮かんでいた
透き通った白さは儚くて
そう長くはいられまい

「居残りかい」
半分の月は答える
「ふふん。もうじき消えるさ。
それよか向こう岸へ行くがいいよ。
アカシアの花が咲き出している」

花はまだ香るには早過ぎて
文句を言おうと空を見上げると
半分の月は青空に融けて
すっかり見えなくなっていた



鳥鳴く声に

鳥が鳴く鳥が鳴く
朝から賑やかに鳥が鳴く

名前を知るもの知らぬもの
屋根や電線、木の梢
空をすいすい飛びながら

朝昼日暮れに鳥が鳴く
鳥が鳴く鳥が鳴く
鳥が鳴く啼く泣く鳥よ

本当は
高い高い木のてっぺんで
誰にも見咎められぬよう
血の涙を流しながら
おんおん思い切り哭きたいのか
鳥よ鳥よ、日が暮れる



白い太陽

未明の雨のせいだろう
覗き込んだ神社の池は
どろりと濁ってなにもみえない
千切れた木の葉や枝が漂う
いつもならすぐに上がってくる鯉も静かだ

薄日が射し始めて
辺りが少し明るくなったとき
濁った池にぽかりと白い円盤が浮かんだ
見上げた空の
小さな雲の切れ間から
射し込む光は眩し過ぎて形はよく分からない

もう一度水面をみると
白い円盤の周りが
あのフェルメールブルーに染まっている
あわててカメラを構える間に
円盤はどんどん鉛色の雲に閉じられてゆく

やっと撮れた写真には
形の崩れた卵の白身が写っているだけだった



桐の花

薄紫の釣鐘の花は
白い懐紙の上で
すっかり茶色に変わり
かさかさと乾いているというのに
先端に僅かに残る紫の痕跡
鼻を近づけると
微かに香る甘い吐息

帰そう帰そう
夜の闇に紛れて
柔らかな土の上に帰そう
派手にとッ散らかった
牡丹の花びらに気づかれぬように



青い雲

雲は西から東へ流れていた
雨上がりの日没間もない空
完全な夜の闇にはまだ支配されていない
灰色の雲はゆっくりと流れてゆく

ぼんやり眺めていると
突然青い雲がぐんぐんと近づいてきた
灰色の雲の前を流れてゆく雲は
タツノオトシゴの形に見えた

雲は流れながら形をどんどん変えてゆく
「青龍。。」
身体をくねりながら進む龍は
端の方からみるみる崩れ始めて消えた。。



くらり

たくさんの花かんざしの下を歩くと

藤色の香りがさぁっと揺れた

たくさんの小さな鈴のそばを通ると

白い香りがふるふると揺れた

街路樹のハナミズキに香りはないけれど

雨催いの空に向かって開いた

たくさんの白い花にくらりと心が揺れた



«傘

Moonlight

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